数方庭祭とは、毎年8月7日から13日までの7日間、山口県下関市長府にある忌宮神社で行われる伝統的な祭りです。この祭りは、およそ1800年前に仲哀天皇が熊襲を討伐した際に、兵士たちがやりや旗を掲げて踊ったのが始まりとされています 。県の無形民俗文化財にも指定されているこの祭りは、「天下の奇祭」とも呼ばれるほどの迫力と美しさを見せます。

数方庭祭の見どころは、何といっても「幟舞い」です。幟舞いとは、男性たちが高さ30メートル、重さ100キロ以上もある竹製の大幟(おおや)と呼ばれる旗を担ぎながら境内を歩くことです 。大幟は2本の竹をつなぎ合わせて作られており、先端には紙製の飾りや提灯が付けられています。男性たちは白いはっぴ姿で大幟を腰縄に引っかけて抱えますが、その重さと長さからバランスを取るのは至難の業です。時々大幟が傾いたり揺れたりすると観客からどよめきや歓声が上がります。

一方、女性たちは「切籠(きりこ)」と呼ばれる灯籠を吊した七夕飾りを手にして境内を歩きます 。切籠は紙製で色鮮やかな花や鳥などの模様が描かれています。女性たちは着物姿で切籠を持ち上げて優雅に行進します。切籠は夜空に浮かんで美しい光景を作り出します。

男性たちと女性たちがそれぞれ持つ大幟や切籠は、「鬼石」と呼ばれる石の周囲を回って対面します 。「鬼石」という名前から想像されるように、この石には伝説があります。仲哀天皇が熊襲討伐に向かう途中で立ち寄ったこの地で、突然現れた鬼(塵輪)と戦った際に殺した鬼の首から血が流れ出して染み込んだものだと言われています 。この鬼石に向かって男女それぞれが自分達の勢力を示すことで、「仲哀天皇」=「忌宮神社」=「長府」という連帯感やアイデンティティーを表現していると考えられます。
 
まさに“天下の奇祭”の名にふさわしい祭りです。

 
施設情報

住所〒752-0967 山口県下関市長府宮の内町1−18
お問い合わせ083-245-1093
アクセスJR下関駅からバス23分「城下町長府」下車、徒歩5分